ロバスト連携プロジェクト

多様な熱需要に対応可能なバイオガスプラント設計運転制御最適化ツール開発

多様な熱需要に対応可能なバイオガスプラントの設計・運転制御最適化ツールの開発(2018年~)
研究代表者 石井 一英(工学研究院)

1. 背景と目的

発酵槽加温に必要な熱以外の余剰熱を利用しているバイオガスプラントのエネルギー利用効率等の実態は必ずしも明らかではありません。

本研究では、

①既存のバイオガスプラントの余剰熱利用の調査・解析、

②その解析結果に基いた余剰熱利用効率向上可能性の検討

を目的としています。

2. 北海道大学牛ふんバイオガスプラント(HBP)

余剰熱を農業ハウスで利用しているHBPにおいて、下図に示す箇所で測定された温度、流量等のデータを本研究で利用しました。

(1)式より発酵槽の熱量収支を解析

ΔQ = Qin  – Qemit  + Q(m-in) – Q(m-out) ・・・(1)

Qin:発酵槽への供給熱量   Q(m-in):投入ふん尿熱量
Qemit:発酵槽の外気放出熱量 Q(m-out):排出発酵残渣熱量

上図より発酵槽へのふん尿投入時に発酵槽温度が下がってしまい、そのための加温に多くの熱量が必要となることがわかります。そこで、発酵槽と同温度で排出される発酵残渣による投入ふん尿の加温を想定し発酵槽の加温に必要な熱量を計算しました。例えば、投入ふん尿温度の実績値8.7℃に対して、14℃まで加温すればQinを9.8 %削減でき、その分を余剰熱として利用できます。

次にプラントからハウスまでの熱収支を解析

ハウスへ送られる余剰熱量の約60 %は配管で損失し、約40 %程度の熱しかハウスの加温に使用されないことがわかります。配管断熱の向上が必要です。

3. 鹿追町バイオガスプラント(SBP)

マンゴー栽培、さつまいも保管及びチョウザメ飼育に余剰熱利用しているSBPの解析を行いました。データの不完全性により全体熱収支解析はせずに、蓄熱槽の熱収支のみを下図に示します。

12月の蓄熱槽の熱収支が負なのは余剰熱タンクからの流入熱量Qinが小さかったのが原因です。余剰熱タンクから蓄熱槽への配管からの熱損失は1月で31,601 MJ、12月で77,804 MJと計算され配管損失がQin低下の一因であり、さらに1月と比べて12月の温水平均流量が小さかったことと、平均送水温度が60.2℃と高かったことが熱損失の大きかった原因として考えられます。  
一方、11月の温水平均流量は145.9 L/minであり、気温も12月と比べて高かったにもかかわらず配管熱損失は84,007 MJであり、12月と同等の熱損失が見られました。平均送水温度が61.0℃と比較的高かったのが原因と考えられます。

4. 結論
  • 北海道大学牛ふんバイオガスプラントでは、温水配管からの熱損失が大きく、また冷えたふん尿投入による発酵槽温度の低下が無視できないことを示されました。配管断熱の他、投入ふん尿の加温による改善可能性を示されました。
  • 鹿追町バイオガスプラントでは、送水温度及び流量による熱損失の違いが顕著でした。余剰熱の利用効率向上のために送水温度と流量の最適化が必要であることを示されました。
2020年度の研究概要

2019年度は、実証試験でのバイオガスプラント、施設園芸等(鹿追町)のデータ解析により、熱収支向上の可能性を検討した。最終年度の2020年度は、これまで得られた知見を統合化し、バイオガスプラント設計・運転制御最適化ツールの開発を行う予定です。

  1. 温水配管の断熱効果の確認
    数値シミュレーションにより温水配管の熱収支をモデル化し、秋~春の外気温を与え、断熱の度合い及び送温水温度を変数とした場合の熱損失最小の条件を求める。次に、地中配管を試験的に埋設し(あるいは実験室で模擬し)、送温水温度、地中温度および断熱材に変化を与えた時の熱損失がモデルと一致するか理論的に研究する。
  2. 全体システム設計と全体最適とツール開発
    バイオガスプラントの物質・エネルギー収支の全体把握、隣接する園芸施設等の熱需要も含めたトータル計測システム、及びその計測を踏まえた設計ツールの作成を行う。また、温室効果ガス発生削減量等環境効果の推計を行う。

温室プロジェクト
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