スマートエネルギー農業のためのヒートバッテリーシステム(2019年~)
研究代表者 能村 貴宏(工学研究院)
再生可能エネルギーの大量導入の実現に向けて、再生可能エネルギーの時間的偏在性とエネルギー需要と供給の地域的偏在性の問題への解決策が求められています。近年、再生可能エネルギーの利用において「カルノーバッテリー(またはヒートバッテリー)」と呼ばれる新たな利用法が注目されています。カルノーバッテリーは、再生可能エネルギー由来の電力の余剰あるいは変動が大きく使用困難な部分を高温の熱に変換し、その熱を中~大規模の蓄熱システムに貯蔵(蓄熱)しておいて、電力需要の大きい時間帯に貯蔵した熱を使ってスチームタービンなどで発電します。”Power-Heat-Power”タイプといえるこの方法(図1参照)は、不安定かつ変動する再生可能エネルギーの安定化・平準化が可能となり、再エネ由来の電力の普及の拡大およびコスト低下につながると期待されています。この技術の実現には(省スペースが求められる我が国での実現には特に)蓄熱体そのものの蓄熱密度の増大が重要です。
我々の研究グループでは、高い蓄熱密度(約0.6~1.0 GJ m-3、従来アルミナ顕熱蓄熱材比約5倍(@ΔT= 50K))と高い熱伝導性(> 50 W m-1 K-1、既存溶融塩系潜熱蓄熱材比100倍以上)を併せ持つ革新的な潜熱蓄熱材、Al-Si系合金系潜熱蓄熱マイクロカプセルを世界に先駆けて開発しました。このマイクロカプセルはセラミックス(主としてα-Al2O3)のシェル内に合金系潜熱蓄熱材のコアが充填されたコアシェル構造です。直径数十マイクロメートルの微粒子であるため、一般的なセラミックス粒子に適用されるような成型プロセスを適用することができるため、固体顕熱蓄熱材料にかわる次世代の蓄熱材料として注目されています。
2019年度の成果
2019年度は、農業を含めた地域コミュニティでの再生可能エネルギー利用率の向上に資するカルノーバッテリー(ヒートバッテリー)システムの実現に向けた潜熱蓄熱マイクロカプセルの作動温度領域の拡大に取組みました。その結果、より高効率の発電、熱供給の期待できるAl(融点:660ºC)を蓄熱材として用いた場合においても、耐久性に優れた潜熱蓄熱マイクロカプセルの開発に成功しました。
2020年度の研究目標
- 提案するヒートバッテリーの到達性能の予測。
- 再生可能エネルギーのポテンシャルの高い北海道の特定の地域をモデルとしたヒートバッテリーの導入効果の予測。