日本ユニシスと北海道大学ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点は、両者が保有する「画像解析技術」と「ペーパーマイクロチップ技術」を活用し、酪農現場における乳牛の周産期(発情、妊娠)を手軽に、早く、高精度に分析する共同研究を開始しました。
繁殖は酪農経営を支える生産基盤であり、繁殖成績の低下は経済的な損失を招き、酪農経営に多大な影響を及ぼします。
本共同研究は、北海道の実際の農場を実証フィールドにすることで、飼料抑制による酪農現場の負荷軽減や妊娠効率化の検証と、研究結果から酪農現場の実運用に則ったサービス展開による社会実装を目指します。
酪農家が直面している課題
- 近年、途上国での穀物需要の増大、異常気象による作柄悪化、為替変動の影響などにより、乳牛に与える飼料価格が高騰しています。乳牛の妊娠サイクルにずれが生じると飼料量の増加、乳量の低下につながるため、酪農家の経営安定には繁殖成績の安定が必要不可欠になっ
ています。 - 乳牛の周産期を把握するための手段である「プロゲステロン(注)」を利用した妊娠検査は専門機関に委託することが一般的で、高精度な結果がわかる一方、判定結果まで時間がかかり、かつ、高額であることから酪農家への負担が大きいことが問題となっています。
北海道大学が取組むペーパーマイクロチップ技術とは
ペーパーマイクロ分析・検査チップ、ペーパーマイクロデバイスと呼ばれ、ろ紙に流路パターンが白抜きになるよう油性インクで印刷し、検出試薬を保持させた検査チップです。北海道大学では、ペーパーマイクロチップ技術の研究に取り組んでおり、現在の主流であるガラスやシリコンを基材にした検査チップの課題である、材料調達・加工・廃棄処理に要する手間やコストの大幅な改善を目指しています。
乳牛妊娠効率化共同研究の概要
研究期間:2018年6月~2019年3月
役割分担:
- 日本ユニシス:ペーパーマイクロチップ用画像解析技術の研究開発
- 北海道大学:ペーパーマイクロチップおよび分析アルゴリズムの研究開発共同研究のゴール
- 専門検査機関に検査を依頼せずペーパーマイクロチップに反応した検査結果を酪農現場で
「見える化」。 - 「手軽に」「早く」「高精度な」妊娠判定を可能にし、平常時から周産期のチェックに利
用することで確度の高い妊娠を支援。これにより飼料抑制に貢献し、酪農家の経営安定に向けた課題を解決。
今後の展開
日本ユニシスは、本共同研究での成果をもとに、「酪農現場向け生産支援サービス」として発展、商品化を目指します。また、北海道大学との連携により、ペーパーマイクロチップ技術の酪農分野へのさらなる適用に加え、畜産を含む農業全般、血液・尿検査といった医療用分析、水質・土壌調査の環境分析、栄養成分や有害物質検出の食品分析、理科の実験ツールなど他の分野への展開も進めていきます。
注:プロゲステロン
プロゲステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、その分泌は排卵直前から活発となり始め、卵子が受精しない場合は黄体の退化と共に分泌が停止します。プロゲステロンの典型的な役割は、着床に備えて子宮内膜を調整すること、そして妊娠を維持することです。
関連URL
乳牛 妊娠判定に紙チップ 低コストで迅速 北海道大学と日本ユニシス(日本農業新聞)
https://news.livedoor.com/article/detail/15170074/